パラレルワールドを自由自在
パラレルワールドとは、私たちが住む現行世界と同時に存在しているもう一つの世界のことで「並行世界」とか「並行時空」などとも呼ばれます。 ある種のトレーニングやワークをする事で、今私たちが体験している世界とは別に存在する並行世界へと移ることができて、その世界では苦しみや悩みのないもう一人の自分として生きることが可能だという説まであります。 確かに、ちょっとしたトレーニングで、まるで生まれ変わったかのような世界で生きることができるなんて魅力的ですし、そんなトレーニングやワークがあるのならぜひ知りたいと思ってしまうのが人間の弱さです。実際のところ、パラレルワールドへ移行するためのトレーニングやワークを売り物にしているスピ系は山ほどあります。 パラレルワールド云々をうたうスピ系は、量子論を引き合いに出すことで、パラレルワールドの存在をいかにも科学者が認めた事実であるかのように喧伝しています。確かにパラレルワールドの概念は、量子論(量子力学)が元になっていますし、その量子論では「多世界解釈」と呼ばれているものです。 ここで少々専門的な話になってしまい恐縮ですが、科学の世界では実験には2通りのものがあります。一つは私たちが普通にイメージする「実験」で、「一定条件下で選択され用意された対象に起きる現象を観察あるいは測定すること(ブルタニカ国際百科事典)」です。もう一つは「思考実験」と呼ばれるもので、「実際に実験を行わず,用意された対象,それに加えられ条件,測定手段と測定器をいずれも理想的なものと仮想し,実験を行なって得られるであろう結果を推論すること(同)」です。つまり実験とは「測定」することで、思考実験とは「推測」する事です。 多世界解釈は、量子論の世界では有名な シュレディンガーの猫 という思考実験によってもたらされた仮説であって、実際に観察されたり測定されたものではありません。量子論を専門にしている科学者の中においても、多世界解釈に肯定的な科学者はごく少数と言われています。 相対性理論や量子論が提唱されたのは1800年代後半から1900年代前半でした。当時は現在のような観測機器がありませんでしたから、その理論の多くは思考実験によってもたらされました。当時の思考実験でもたらされた仮説をその後のテクノロジーの進化が実証実験を可能にし、推測に過ぎなかったものを事実と...