ハイヤーセルフとつながろう

 ハイヤーセルフとは、物質次元を超えた高い次元に存在する「高次元の自己」のことです。あらゆる宇宙の情報とつながり、物理次元にあるあなたに関わるすべてを采配しています。

 ハイヤーセルフは、高い次元から自分のすべてを見通すことができる全知全能のもうひとりの自分自身ですから、本当の人生の導き手であるのです。精神集中することで4次元や5次元にいるハイヤーセルフから物理次元にいる自分に関して明確なビジョンを受け取ることが可能です。ハイヤーセルフとは全ての自己実現を行なっているあなた自身ですので、ここに波長を合わせることで自然と望み通りの人生を手に入れることができるのです。

 「望み通りの人生が手に入る!」なんてコピーを見聞きして、心がざわつかない人がいないわけがありません。しかしながらハイヤーセルフという言葉はとても曖昧で、この単語を使っている人の数だけ意味をもっていますから、このコピーが真実かどうかは検証のしようがありません。上記したハイヤーセルフの説明も、ネット上のスピ系サイトでよく見かけるフレーズを適当に引っ張ってきたものです。


 神智学協会(1875年設立)の設立者の一人である、ロシア人のヘレナ・ペトロヴナ・ブラヴァツキー氏が、古代インドのヴェーダ教が説く「アートマン(Atma、真我)」の事をハイヤーセルフと言うと公にしたことが、ハイヤーセルフという言葉が世に出た最初と言われています。

 元々、 Atma はサンスクリット語で「呼吸」という意味です。ヴェーダ教は後のバラモン教、ヒンドゥー教へと変遷していきますが、Atma の概念も時代により変遷していくので、Atma の意味する所もとても広範なものになっていきます。

 

H・P・ブラヴァツキー

 ブラヴァツキー氏が Atma をどう解釈して、そしてどういう意図を持ってAtma = Higherself としたのかは、彼女自身しかわからない事です。Higherself が未だにしっかりとした定義付けがされることなく現在に至っている原因と言えます。

 神智学といえば、これまで見てきたようにニューエイジの源流の一つであります。キリスト教的価値観を否定し、厭世的で現実逃避的な背景を持つニューエイジに取り込まれたハイヤーセルフが、彼らに都合良く定義づけられたとしても何ら不思議ではありません。

 ご存知の方も多いかと思いますが、キリスト教は一神教であり、全知全能の神の下に人間が存在しています。が、ニューエイジ系ではハイヤーセルフ、つまり高次元の自分自身が全知全能であり、ここと繋がることで望み通りの人生が得られると説きます。さらに全知全能の自分自身が神そのものであるとの考えにまで導いていくのです。

 この思想のたどり着く先は、自分は神であり創造主であるのだから、自分の人生だけではなく宇宙すら思いのままに変えることができる、というものです。言ってみれば、ニューエイジ系のスピが扱っているハイヤーセルフ思想は、「究極の中二病」と表現することができます。これまでにこういった考えにとりつかれたカルトリーダーによって洗脳され、集団自殺事件やテロ事件を起こしたカルトは少なくありません。

 キリスト教に限らずとも、神と名の付くものは自分とは別個の存在と捉えるのが多くの宗教の概念です。ニューエイジの持つこのハイヤーセルフの概念こそが、数々の社会学者、宗教界、心理学者などからニューエイジが批判を受ける根源とも言うことができるのです。

 前に述べたとおり、 Atma とは元々呼吸という意味です。私たちは1日のほとんどの時間を呼吸を意識することなく過ごしています。そして時々呼吸を意識させられるような事が起こります。

 極度に緊張すると呼吸が浅くなって「息が詰まりそう」になります。驚くような事があると「呼吸が止まりそう」になります。焦っているときは知らず知らずに呼吸が早くなっています。これらのような時は意識的に深呼吸をする事で、落ち着きを取り戻せることもあります。つまり呼吸とは、皆さんの無意識状態を反映しているのです。

 心が平和であれば無意識にゆったりとした深い呼吸をしているものですが、忙しい現代人にとって、そのような呼吸になっている時間はほとんど無いと言っても良いでしょう。心に平和を感じられない理由は、私たちが未熟で、この世的な様々な煩悩に苛まれているからです。仏教やヨガでいう悟りの境地に到る事ができれば、きっとゆったりとした深い呼吸をしている時間が増えるに違いありません。あなたの内面的実像(真我)は呼吸を観察することで明らかになります。元来は呼吸という意味の Atma を真我と解釈したのはこう言った理由からなのでしょう。

 ゆったりとした深い呼吸を実現する(悟りの境地を拓く)ためには、真我である呼吸を折に触れて観察することで現状を捉え、呼吸が乱れている場合はその原因を探り、自分自身で考え方や行動を修正していくプロセスが大切です。

 ハイヤーセルフ(Atma ,真我)はどこか次元の違う所に存在するのではなく、あなたの内面に存在しているのです。ハイヤーセルフにつながるとは、自分自身を良く観察することに他ならないのです。

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