前世を知ればお悩み解決
前世療法と呼ばれるものがあります。過去生を追体験をすることによってその時の人生がどのような意味を持ち、その人生が今回の人生にどのような影響を与えているかということを探るのです。前世を知ることで、深い気づきを得ることができ、その他の心理療法では解決できなかった様々な症状からも回復することができると言われています。
前世療法と聞くと、一般の方々は身構えてしまうからでしょうか、スピ系ではヒプノセラピーと称して活動されている方が多くいらっしゃるようです。ですから、スピ系に興味がある方はヒプノセラピー = 前世療法と認識されている方は少なくありません。
ところが実際は、ヒプノセラピーは前世療法とイコールではありません。
ヒプノセラピーとは日本語では催眠療法と訳されますが、その催眠療法は数ある心理療法の中の一つのジャンルに過ぎません。大学で心理学を学んだことがある方は、催眠療法について扱った記憶がある方がいらっしゃるかも知れませんね。
催眠療法は心理療法の技法の一つですので、臨床で行なうにはそれなりの見識、知識、資格が求められます。具体的には臨床心理士、公認心理師、医師、歯科医師、その他国家免許が必要な医療系の対人援助職(薬剤師、看護師、助産師、鍼灸師、柔整師、歯科衛生士、作業療法士、理学療法士等)に限って、日本ではオーソライズされた技法が教授されています。
有体に言えば、以上のような国家免許や資格を合わせ持っていない催眠療法士は、モグリなのです。養成機関によっては米国由来の催眠(ヒプノ)に関わる資格所持者は、受講すらできないのが現実です。
以上述べてきたとおり、ヒプノセラピーと称するものは催眠によるセラピーです。催眠によって普段は意識に昇ってこない意識(潜在意識、無意識)にアプローチすることで、様々な心因性の症状から回復させようとする試みです。
ですから、ヒプノセラピーは spiritual が本当に意味するところである「霊に関するもの」「霊媒現象に関するもの」ではありませんので、ヒプノセラピーをスピリチュアルに関連付けることは、明らかに間違っています。さらに述べれば、先にあげたオーソライズされた催眠療法でさえ、その範疇に前世療法を入れていないのです。
潜在意識の中には過去の体験が蓄積されているので、催眠によって、過去や幼児期までの経験を追体験することが可能です。前世療法と呼ばれるものはこれを応用して、幼児期をさらに遡って、今世に生まれる以前の記憶にアプローチすることが可能だと謳っています。
幼児期の体験は、本人や周囲の記録や記憶によってエビデンス(証拠、証明)を得ることが可能ですが、前世の記憶のエビデンスを取ることはとても難しいことです。世界中を見回すと、前世の記憶を持った子供が存在していて、その子の前世のエビデンスを明らかにすることで、前世の存在を証明しようとする試みも行われていますが、そういったものは極々少数の事例です。
その子供たちは何らかの理由があって前世の記憶を持ち合わせているのであって、大多数の人は前世の記憶が顕在意識に昇ってくることはほとんどありません。
私たちは何かしらの目的があってこの世に生まれて来ていますが、この人生での学びを得るためには、予断なく様々な経験をすることが大切な要素であるので、今世への再生時に前世の記憶が凍結されるのは神の配慮だとも言われています。多くの場合、前世を知る必要はないと言えるのです。
前世療法で指摘される主な問題点として、セラピストが無意識に設定したシナリオ通りにクライアントを誘導しているのではないかという疑念がつきまとうことであり、結果として現れる前世がセラピストによってステレオタイプ化されているというものがあります。また未熟なセラピストによって過去のトラウマが増幅されてしまい、症状が悪化した事例も報告されています。さらにはセラピー中にハイヤーセルフに繋がるなどと意味不明な事を謳っているセラピストさえいます。
心を患われ、心理療法の一環としての催眠療法が必要な方、催眠療法が有効な方はいらっしゃいますが、その必要性は医療の知識を持った専門家が判断することでしょう。モグリのセラピストには十分に注意することが大切です。
先に述べたとおり、前世の記憶を持ったまま生まれてくる子供がいるのは、何かしらの目的や理由があるからです。ミディアムから前世の様子を告げられる方が時々いらっしゃいますが、そういったメッセージも何かしらの目的や理由があってのこと。前世の情報は必要な時期に適切なタイミングでもたらされるものですし、あくまでも自分の内面性を省みるためにもたらされるものでもあります。
興味本位や過剰な期待を持って、自分の前世を探ることはおやめになった方が良いでしょう。私たちは、前世ではなく今世という現実を生きているのです。そして現実から学ぶ必要があるから生かされているのです。